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2023-08-07

メタレンズの設計及び解析

概要

レンズは、その位相を変化させることによって集光また焦点をぼかす透過性光学デバイスです。従来のレンズとは異なり、メタレンズは、複雑で体積の大きいレンズ群を必要とせずに、波長およびそれ以下のオーダーのサイズの構造を使用して、非常に薄い層で所望の位相変化を達成することができるという利点を有します。この例では、円柱誘電体ナノピラーを用いたメタレンズの設計プロセスを示しました。そのナノスケール構造と高屈折率コントラストのために、電磁場の完全なベクトルモデリングが不可欠です。初期設定にはE.Bayataの研究によるパラメーターを用いました。


Bayata,Elyas;Optical Metasurface Systems,University of Washington,2022からのパラメータ
(https://labs.ece.uw.edu/amlab/Thesis/UWPhDThesis_Elyas_Bayati_Final.pdf)

 

シミュレーションと設定:シングルプラットフォームの相互運用性

コネクティッドモデリング技術:メタレンズ

1) メタレンズ(ピラー構造の解析)

周期的なマイクロ構造およびナノ構造のための利用可能なモデリング技術:

方法 前提条件 精度 速度 コメント
Fourier Modal 法(FMM) なし 高い 低い -
Thin Element Approximation 薄くて大きな周期と構造 高い 高い 波長程度の厚み:周期と構造がおよそ波長の10倍以上
それ以外 低い 高い
FMM in Kogelnik Approximation 厚みのある体積格子;ブラッグ条件 高い 非常に高い 方法はKogelnikの手法を電磁気学的に定式化したもの
ブラッグ条件なし 低い 非常に高い

厳密な固有モードソルバとして、Fourier Modal法(厳密な結合波解析、RCWAとしても知られています)は非常に高い精度を提供します。計算にはしばらくかかる場合がありますが、このような複雑なシステムでは、絶対に高い精度が必要です。

コネクティッドモデリング技術:自由空間伝搬

2) 焦点までの伝搬

自由空間伝搬の利用可能なモデリング技術:

方法 前提条件 精度 速度 コメント
RayLeigh Sommerfeld積分 なし 高い 低い
厳密解
Fourier Domain Techniques なし 高い 高い RS積分の厳密な数学的再定式化
フレネル積分 近軸 高い 高い 近軸光を仮定:非常に短い距離に対して中程度の速度
非近軸 低い 高い

幾何光学的伝搬

低回折 高い 非常に高い 回折効果を無視
それ以外 低い 非常に高い

焦点に電磁場を伝搬させると、回折効果が作用することが期待されます。このため、この自由空間伝搬ステップのシミュレーションには、速度と精度の妥協点としてFourier Domain Techniquesが選ばれました。

コネクティッドモデリング技術:検出器

3) 検出器

様々な物理量を非常に柔軟に検出できます:

  • 放射測定、例えば:放射照度、強度
  • 測光法、例えば:照度、輝度
  • 横方向の広がり(FWHMなど)の計測

メタレンズ設計手順

理想的な位相の生成

無収差焦点を達成するため、「forward design method」(参考文献を参照)の球面位相を使用します。ここで、直径、焦点距離、およびサンプリング(メタ構造のユニットセルのサイズに関する)などの必要なパラメータは、設定することが可能です。

ピラー直径 vs 位相値

この事例におけるメタレンズの構成ブロックは、円柱状誘電体ナノピラーです。ユニットセルのサイズおよびピラーの高さは、参考文献で選択されているため、ピラーによって与えられる位相は、パラメーターランを使用して、その直径の関数として計算することができます。右図はピラー径と位相値の関係を示しています。

ピラー分布の設計

所望の光学関数と、選択されたタイプのメタアトムによって提供される位相値とによって、横方向の分布を設計することができます。このステップでは、所望の位相の横方向分布を生成するために適切なピラーの直径を選択するモジュールが使用されます。


モジュール「Design Pillar Distribution.cs」を使用します。このモジュールにより、振幅が所定の閾値(ここでは:0.9)以下であれば、ピラー直径を除外することができます。これにより、ジャンプ(モードの共鳴によるものなど)の除外に役立ちます。

ピラー分布の設計時に、メタレンズの期待される応答と、最初に期待した関数からの偏差も出力として提供されます:

メタレンズのセットアップ

メタレンズをセットアップするために、General Grating Component(Grating Specific Optical Setup)でピラー直径の分布をPillar Mediumにインポートします。

さらに、ピラーの高さと形状、およびマテリアルは、「Pillar Geometry」タブで適切に設定する必要があります:

メタレンズの横方向の広がり(サイズ)は、「Periodization」タブで設定します:

結果のメタ構造

Pillar Mediumのプレビューウィンドウには、ピラー分布が表示されます。カラースケールは屈折率(実部)を表します。

シミュレーションワークフローステップ#1

ピラー構造の機能をモデル化するために、Fourier Modal 法(FMM、RCWAとしても知られる)を適用しました。この目的のために、General Optical Componentを有するGrating Specific Optical Setupが使用されます。設計段階で使用される方法とは対照的に、今度は、結果として生じる位相は、近接する異なるピラーの相互作用を含みます。

シミュレーションワークフローステップ#2

第2段階では、実構造の計算された関数は、Stored Function Componentを使用して、General Optical Setupにおいてさらに伝搬されます。

比較

初期関数の焦点スポットおよび設計されたピラー構造の応答は、同一のスポットを提供しますが、ピラー構造を通る伝搬は、いくつかの収差を引き起こします。しかしながら、設計されたメタレンズは、依然として、元の位相関数と同様のサイズおよび構造の焦点を提供します。この結果は、その後の最適化の出発点となります。

ピラー構造エクスポート

設計されたピラー構造をエクスポートするために、GDSIIとテキストベースのエクスポートがモジュールを介してサポートされます。


モジュール「Export Pillar Distribution.cs」は、Optical Setup内のPillar Mediumのピラー構成をGDSIIおよびテキストベースのテーブル(ピラーの位置と直径を含みます)にエクスポートします。

文書情報

タイトル メタレンズの設計及び解析
文書コード GRT.0031
バージョン 1.1
エディション VirtualLab Fusion Advanced
ソフトウェアバージョン 2023.1 (build 1.556)
カテゴリー Application Use Case
参考資料

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